インタビュー

家族は共同体。
一緒に育てて、
一緒に大きくなっていく。

Case 3

こんどうようすけ

近藤 洋介 さん

(46歳/帯広市出身)

プロフィール

  • 家族構成

    妻(会社員)
    +長女(中学2年)
    +次女(小学5年)

  • 勤務形態

    会社員(都市計画コンサルタント)

  • 勤務先

    株式会社ノーザンクロス
    北海道におけるまちづくり事業を総合的に展開。まちづくりに取り組む人や組織、地域をつなぐプラットフォームとしての役割を果たすとともに、新たなまちづくり事業やまち経営事業を開拓するローカルベンチャーとしての成長をめざしています。
    http://www.northerncross.co.jp

札幌のまちづくり会社で自治体などの都市計画コンサルタントを務める近藤さん。創成川イーストの地域活性化をめざして2017年に発足した「一般社団法人 さっぽろ下町づくり社」の運営にも携わっており、多忙な毎日を送っています。家に帰れば2人の女の子のお父さん。「下の子も小学校高学年になり、最近は手をつないでくれないんですよ。寂しい!」と苦笑いする近藤さんに、子育て全盛期を思い出して語っていただきました。

「イクメン」という言葉が嫌い。
できることをするのが当たり前だから。

うちは夫婦とも市内中心部に職場があって、最初は職場近くの保育園だったので地下鉄1本で送り迎えできて楽でした。でもその保育園が閉園になり、乗り換え沿線の保育園に転園したところ、ラッシュ時の送り迎えが大変で。結局都心部に駐車場を借りてマイカー通勤することにしました。朝は子どもたちを保育園に送って夫婦それぞれ出勤。基本、定時で仕事が終わる妻が車で子どもたちを迎えに行って帰宅し、僕は地下鉄で帰る。夏は毎日、車に自転車を積んで出勤し、乗って帰っていました。妻が出張や残業の時は僕が早上がりして迎えに行き、二人ともダメな時はおばあちゃんにお願いしたり、民間の子育てサポートなどを利用していました

―働くお父さん・お母さんにとって保育園の送り迎えは共通の悩み。中心部の保育園の場合、朝のラッシュアワーに小さな子どもを連れて地下鉄を乗り換えるのは、親はもちろん子どもにとっても大きなストレスになりそうです。駐車場代はかかりますが、親も子どもも気持ち良く通勤・通園するためのひとつの手段といえるかもしれません。

うちは利便性を優先して職場に近い保育園を選びましたが、中心部ゆえに困ったこともありました。急な発熱で保育園から呼び出されても街中には救急当番の病院がなく、離れた病院まで連れて行かなければならないんです。移動時間もかかるし、かかりつけではない病院だと何かと不安だし……すぐに子どもを診てくれる病院が街中にあればいいな、と思うことがたびたびありました

子どもは急に熱を出すことがよくありますもんね。職場の近くに子どもを預けられて、万一の時にもすぐに病院に連れて行ける環境があれば、働くお父さん・お母さんにとってとても心強いことでしょう。それにしても近藤さん、積極的に子育てに参加していたようですね。

共働きなんだから夫婦は対等なのが当たり前。妻が子どもの世話をしている時は僕が家事をするなど、それぞれができる時にできることをして役割分担していました。まあ僕自身が家が汚かったりご飯がないのが嫌だから、自分が気持ちよく暮らせることをやっていただけなんですが……子どもを育てていると、父親にできることって案外ないんだなとわかってきたんです。妻が出かけて子どもの面倒を見ていても「お母さん何時に帰ってくるの」と言い出すことがしょっちゅうで、子どもにとってお母さんは大きな存在なんだなと実感しました。だからせめて僕ができることをやろうと。子どもが小学校に上がってからは、参観日に行けない代わりに6年間PTAの広報委員を務めることを宣言しました。だって家族は共同体なんだから、自分ができることをするのは当然でしょう?僕、『イクメン』って言葉が嫌いなんです。共同体のひとりとして奥さんと対等に子育てしていれば、自ら『イクメン』と名乗る必要はないですよね

近藤さん、なんと良き父・良き夫なのでしょう……子どもの世話をしている間に家事が進んでいれば奥さんは喜ぶし、お父さんがPTAで活躍する姿は子どもにとってもうれしいもの。子どもに直接関わるだけがイクメンじゃないのですね。

周りに流されず、
自分の道を突き進んでほしい。

―お子さんたちは現在中学2年生と小学5年生。幼い頃に比べてお子さんとの関係も変わったでしょうか。

残業が多く平日に子どもと接する時間が少ない分、昔は土日にうんと遊ぶようにしていました。でも上の子が中学生になると土日は部活でいないことが多いので、家族そろって出かけることは少なくなりましたね。朝は下の子と一緒に家を出るんですが、最近は並んで歩いてくれず、どんどん先に行っちゃって……別れ際に手を振ってくれるけど、ちょっと寂しいんですよねぇ。思春期になって親との距離感が変化してきたのを感じます。一方、母親とは一緒に過ごす時間が長いのでいろいろ話しているようなので、妻とよく話して、子どもの興味関心や悩みなどを夫婦間で共有するようにしています。たまに子どもたちが手紙をくれるんですよ。妻には『育ててくれてありがとう』『守ってくれてありがとう』、僕には『悩んでいる時にヒントやアドバイスをくれてありがとう』といった具合に。子どもの中での父親と母親の役割は違うんだなぁと実感しますね

―お子さんからの手紙は一生の宝物ですね。二人にはどんな大人になってほしいと思いますか?

まちづくりの仕事に携わっていて実感するんですが、社会には学歴や肩書きに関係なく、自分の得意なことを活かして活躍している有能な人がたくさんいます。子どもたちにもレールに乗った人生ではなく、周りに流されずに進むべき道を自分で見つけて、まっすぐ突き進んでほしい。できれば手に職をつけて社会で役立ててほしいと思っています

―近藤さんは『さっぽろ下町づくり社』理事として、創成川イーストのまちづくりにも携わっているそうですね。

創成川イーストはここ数年マンションの急増に伴い、子どもの数がすごく増えています。子どもの頃に見た原風景は大人になってからも物事を考える原点になるものだし、公園や遊び場、抜け道といった思い出は、子どもの人生を豊かにしてくれるはず。まちなかに子どもの居場所をつくることは大人の責任であり、さっぽろ下町づくり社を通して「記憶に残るまち」をつくることが自分のミッションだと感じています。そのためにまちと子どもの関わりの創出にも力を入れていて、秋祭りの子ども神輿やラジオ体操の復活に向けた取り組みや、さっぽろ下町づくり社のロゴを子どもたちに考えてもらう企画を進めています。わが家の子育てはひと段落しましたが、これからはまちの子育てが始まると思うと楽しみですね

\こんなことも聞いてみた/

  • Q

    保育園ではお父さん同士の交流はありましたか?

  • A

    お母さん同様、お父さんにとっても保育園は出会いの場。毎朝会うお父さんと仲良くなってパパ友ができました。たまに一緒にご飯を食べたり、家族ぐるみでキャンプに行ったり、楽しかったですよ。お母さん同士も互いに情報交換していて、不要になったベビーカーやベビーバス、ベビーベッドを使ってもらったりしてすごく助かりました。

  • Q

    子どもを叱る時、気をつけていることはありますか?

  • A

    細かいことでいちいち怒ることはないけど、人として間違ったことをした時はガッツリ叱ります。両親で怒ると子どもの逃げ場がなくなっちゃうので、どちらかが怒る時はどちらかがフォローにまわり、冷静に話を聞いてあげるようにしています。実は一度だけ二人で怒って子どもを追い詰めてしまい、失敗しちゃったんです。夫婦で反省して話し合い、その後はこういう形を取るようになりました。失敗しないと親も成長しない。子どもに育ててもらっている部分も大きいと思います。

  • Q

    小学校に入ったお子さんの放課後の預け先、どうしてます?

  • A

    初めは学童保育に行かせていました。でも同じ小学校の友達がいなくてなじめず、そういた状況に対する先生のケアも行き届いていないと感じたので、学童を辞めて習い事を始めました。我慢して通うより自分がやりたいことをやらせる方が有意義だし、幼い頃から「これだけは誰にも負けない」と言えるものを見つけなさい、そのために親は投資するから、と伝えてきたので。
    小学校でも気の合う友達ができて、保護者同士もとても仲良くなりました。放課後遊びに行って、妻が仕事終わりに迎えに行くまで面倒を見てもらったりして、ありがたかったですね。よく妻が「たくさんの人に助けられて子育てできたんだね。うちの子はみんなに育ててもらったね」と言うんですが、僕もつくづくそう思います。

テキスト:佐々木美和 写真:辻田美穂子