インタビュー

子育ては、
自分が一番楽な道を
選んでいい。

CASE 6

しらとりのぶこ

白取 信子 さん

(47歳/青森市出身)

プロフィール

  • 家族構成

    夫+長女&次女(双子・11歳)
    +長男(8歳)

  • 職業

    テレビディレクター

  • 勤務先

    HBC北海道放送
    報道制作センター 情報制作部

白取さんはHBC北海道放送の情報ワイド番組『今日ドキッ!』の“中の人”。番組に日替わりで出演するコメンテーターの選定や出演依頼、当日の対応などを行っています。家に帰れば双子の姉妹と男の子のお母さん。かつては出産を機に退職するのが普通だったテレビ業界で仕事と子育てを両立させてきた、働くお母さんの大先輩です。

私、子どもの目を見ていない。
生き方を立て直したいと思った。

「ずっと報道をやりたくて、文系の大学を卒業後に大学院へ進学。修了後にHBCに入社して北海道に来ました。入社後は報道部に配属され、警察や司法、朝番組などを担当。入社10年目で上の双子を出産しました。
テレビ業界は男性が多い職場で長時間労働も当たり前の世界。ひと昔前は出産を機に退職するケースがほとんどでした。私も「この仕事は大変だから辞めた方がいい」「子どもにはお母さんが家にいた方がいい」と言われて、そんなものなのかな?と思ったんですが、夫が「せっかくここまでやってきたんだから続けてみれば」と言ってくれたので、仕事を続けることを決心。産休・育休を経て報道部に復職しました。」

―報道の仕事ってすごくハードなイメージがありますが、子育てとの両立はどうでしたか?

「報道は取材で外に出たり帰宅が遅くなることも多いし、常に勉強しなければならないので、とにかく一日一日をこなすので精いっぱい。夫は社内結婚なので私の状況を理解してくれていて、シフトが合えば保育園の送り迎えなどをやってくれていたのでとても助かりました。でも、ある時ふと気づいたんです。「そういえば3日くらい子どもの目を見て話してないな」と……私、ヤバイかもと思いました。仕事の比重が大きくなれば子どもと接する時間が減るのは当たり前なのに、仕事中心に回っている毎日に子どもをそこに巻き込んでいる状況だったんですね。それに気づいた時、自分の生き方を立て直したいと思いました。だから3人目が生まれた時に時短勤務を取得したんです。産休・育休を取得した先輩はいましたが、時短勤務は社内初の事例でした。この時報道部から総務部に異動になったんですけど、今思えば前例のない中で時短勤務をしやすくするために、会社が配慮してくれたのかもしれません。」

―報道の現場を離れることに心残りはなかったですか?

「サラリーマンですから異動があって当然ですよ!むしろ自分の会社を今までとは違う視点で見ることができて、組織や職場のより良いあり方を考えることができました。今の仕事もさまざまなジャンルのゲストと接点を持つことができ、日々学ぶことがたくさんあります。  うちの会社はここ10年ほどで子育てしやすい職場環境の整備が急速に進みました。アナウンサー職や記者職でも時短勤務が可能になったし、子どもの急病などで休みを取るのも法制以上の配慮がされています。会社が契約した保育園もあり、出産後に復帰する女性社員が増えたと思います。 」

毎日が予測不能の子育てを
つらいものにしないために。

―一人っ子が増える中、白取さんのお宅は3人きょうだい。初めての子育てが双子というのも大変だったと思いますが、3人の子育てはどうでしたか?

「上の双子は保育園の送り迎えで毎日泣いていてすごく手がかかったけど、下の息子は2歳くらいから自分で着替えて朝食を食べるような手のかからない子でした。お姉ちゃんたちが弟の世話をしながらよく3人で遊んでいたので、子どもが多いから大変ということはなかったですね。ただ小さいうちは毎日が予測不能でした。3人が順繰りに熱を出したりするとパニック!何日も仕事を休むわけにはいかないので病後児デイサービスを利用したり、どうしても手が回らない時は青森から母を呼んで助けてもらっていました。
子育て支援サービスもフル利用していましたね。病後児デイサービスのほかにも「さっぽろ子育てセンター」や「札幌市こども緊急サポートネットワーク」、双子の親子交流会「んぐんぐまーま」など……民間のベビーシッターサービスも複数登録しておき、必要なサービスを組み合わせて日々対応していました。低価格で子どもの面倒を見てくれるシッターさんにはほんとうに助けられました。
私、人生において困難な道を選ぶことは厭わないけど、子育ては自分が一番楽な道を選んできました。「お母さんだから全部自分でやらなきゃ」とすべて背負い込んでしまうと、子育てがつらくなってしまう。すると子どものちょっとした言動にもイライラして、ますます子育てがつらくなる。そうならないために、便利なサービスがあればどんどん使えばいいし、手抜きできる所は手抜きしてもいいんです。離乳食にベビーフードを使ってもいいし、後でできることは後回し。洗濯物がたまったくらいで死にやしない!子どもたちからあれこれ言われても「後でいいよね」ばかりなので「あとで母ちゃん」って呼ばれてます(笑)。 」

初めての育児の不安を和らげてくれるのは「共感」。「簡単に読めて同じお母さんの気持ちを共有できる育児マンガはオススメです」と白取さん。 保育園の連絡帳も白取さんの大切な共感アイテム。「毎日書くのは大変だけど、先生の返信がびっしり書かれていると、子どもだけじゃなく私自身も認めてもらえた気がしてすごく元気が出ました」。

―「自分が一番楽な道を選ぶ」。家事や育児に疲れてしまっているお母さんたちにぜひ聞いてほしい言葉です!「子どものために」頑張りすぎてイライラして子どもを不安にさせるより、「自分のために」頑張らないでニコニコしている方が、子どもも安心して過ごせるはず。お母さんだって時々甘えたっていいんですよね。

「初めての子育てはみんな不安なものだから、完璧にやろうとしてもうまく行かなくて悩むことが多いもの。仕事も家庭の状況もみんな違うから、子育てに正解はないんですよね。私も子育てしていて悩むことが多かったけど、欲しかったのはアドバイスではなく「共感」でした。先輩や友達の「大変だよね」の一言がすごくありがたかったのを覚えています。 子育てしながら仕事を続ける上では「共有」も大切。私が働き続けていられるのは、同じ職場の人と仕事を共有しているおかげ。急に休まなければならなくなっても仕事をカバーしてくれるので安心して任せられます。その人が休むと仕事が回らなくなる職場だと休みたくても休めないし、作業効率も上がらない。それって女性だけでなく職場全体にとってもメリットがないですよね。 働き方や性別に関わらず、一人ひとりが自分の能力を発揮できるのが「働きやすい職場」なんじゃないかな。私も職場や家族、公共サービスなどに支えられて仕事と子育てをやってきましたが、こんな私を見て「あ、できるんだ」と思ってもらうことで次世代の職場づくりにつながればと思っています。」

白取さんのある一日

\こんなことも聞いてみた/

  • Q

    時短勤務を取得して変わったことは?

  • A

    上の双子と下の息子が別々の保育園だったので、送り迎えに片道1時間かかっていたんです。だから毎日ヘトヘトで、休日は「翌週からの仕事のために休む」という感じでした。時短勤務になってからは平日の負担が減った分、休日に子どもたちを連れて遊びに出かけるゆとりができました。

  • Q

    リフレッシュ法を教えて!

  • A

    ヨガと瞑想。眠る前に1分でもいいから何も考えない時間を持つとスッキリするんです。夏はランニング、冬はスキーで体を動かすのも良いリフレッシュになっています。

  • Q

    夢はありますか?

  • A

    将来、自然豊かな場所で保育及び学童施設をやりたいなあと思っています。子どもが通っている学童が郊外にあって、自然豊かでほっとできる場所なんです。そんなところで北欧みたいに親子一緒に朝ごはんを食べたり、子どもが安心して過ごせる場所づくりに携わりたいです。資金があれば……なので夢のまた夢ですが!

テキスト:佐々木美和 写真:辻田美穂子